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大匙屋

聞かせてもらうぞこの世界の謎を

ロング・ウェイ・ノース (2015年)  


■ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん (2015)

年若いロシア女性が貴族階級のしがらみに端を発する逆境に立ち向かい、精神の自立を獲得し、いかにその信念を貫き通すかについての物語。
19世紀末。15歳の少女サーシャは、愛する祖父に何が起こったのかを発見する旅に出る。行方不明になった探検家の祖父は、皇帝陛下のお金を浪費したとして非難されており、サーシャは家族の名誉を回復するため危険と不思議に満ちた極地へと踏み出してゆく。

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7月の劇場公開に続いて、今月12月に日本語版ビデオソフトが発売、レンタルも開始になりました。めでてえ。

2016年正月に欧州で劇場公開され、あちらでビデオが発売されたのが2017年。そこから日本語版発売まで3年。出してくれるのはありがたいですが、もうちょっと早くても良かった気がする・・・とはいえ、レミシャイエ監督はこれが長編デビュー作で数字的にまったく未知数、メーカーにとっても難しい部分あったのでしょう。欧州発のオリジナルアニメは興行的には軒並み失敗している現状なので、致し方ないかも

ロングウェイノース(Tout en haut du monde)本国フランスでの公開時は、人気アニメの劇場版「アルビン4 それいけ! シマリス大作戦」と被り、「DOFUS映画版」と被り、「ズートピア」と被りでひたすら運がなく、大手劇場はスクリーンを割いてくれず苦戦を強いられたと聞いています。ファミリー層・ヤング層向けのオリジナルアニメ映画でディズニーに真正面から対抗するのは本当に難しい。TAAF2016でグランプリを取るなど評価の高い作品だけにバクチに出る配給会社があればよかったんですが、前述したように欧州のアニメは当たってないので信用もなく、ろくに宣伝もされずで大変厳しい。

日本国内ですと今年の夏はコロナ禍で劇場に空きがあり公開可能だったのと、関連作品として監督の次作「カラミティ」がアヌシーを獲ったりで継続的な宣伝キャンペーンに追い風が重なって今回ソフト化に繫がった格好です。


予告編日本語字幕これは少し前に僕が字幕を作ったやつです

「ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん」が邦題
英語題が「Long Way North」で仏語題が「Tout en haut du monde」この仏語を訳すと「地球のてっぺん」になる

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2年くらい前に全編自分で訳した。何しろ日本語版これ出ないわと確信してたので今回発売になって逆に吃驚した
ツイッターにも少し書いたんですがこの作品、面白くて。2日か3日くらいで夢中で訳しました。訳すのが楽しくてしょうがなかった。そんな作品めったにない。だからやっぱりコレは面白かったんだと思う。これは名作です。

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主線(オモセン)排したシンプルでユニークな独特のルック。デザインや美術にはカッサンドルやアールデコへの意識がうかがえる。(ブロデールやピエール・フィックス・マッソーなど1920~30年代のビンテージポスターも参考に) 色の賢明な選択と、巧妙に作成されたアニメーション。危険な瞬間がたくさんあり、緊張感をともなう人間関係のドラマと激しさに満ちたアクションシーンがたくさんあります。

「輪郭線の問題点は、多かれ少なかれそれが黒であるということです。デザインにアウトラインがあると、映画のすべての色はその黒に合わせなければならず、カラーパレットやスペクトルが制限されてしまいます。アウトラインがないことで、黒だけではなく、映画全体で様々なカラーパレットを自由に探索することができるようになりました」(レミ・シャイエ監督談)

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話がわかりやすくて、何が起きようとしてるのか最初の数分で全部わかるのが凄い。登場人物の名前や、場所がどこなのか、誰が何をしているのか、どんな人間なのか、何を失い何を得るのか。ずっと見ていられるのはこういう部分がすっと頭に入ってくる序盤の構成の上手さが際立っているからだと思う。逆に言えば、要するに様式的なんですけどね。

わかりやすいから子供かでも大人でもスッと入って理解できるし楽しめる、実際面白いし最後まで飽きることはない。なぜヒットしないのだろう、これ・・・

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このラーソン(ラルソン)という男の描かれ方には監督のまなざしを感じます。ひねくれた負け犬だったんだけど、サーシャと出会い、旅が難航する中で人が変わったように覚醒していく。

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サーシャがラーソンを罵倒するシーンがあって英訳だとセリフが「You're just so pathetic.」になってたので、ここは一旦「哀れな男」と訳したんだけどしっくりこず、そもそもサーシャって育ちの良い上品なお嬢様で人を罵倒したり悪口になるような言葉を持ってないはずだなあーと悩んだんですよ。罵るにしても不慣れで感覚が少しズレているはずと思った。

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それで悩んだ末にオルガに先にラーソンを卑下させて、その言葉をサーシャに使わせた。これがサーシャのキャラに合ってるのかどうなのか、1年以上経つけどまだ確信に至ってない(次候補は「この負け犬」だった)。どうでもいい話でしたね。自分で訳した時にこういう違いをあれこれと考えるのが楽しかったのをよく覚えてます。元々キャラクターがうまく作られているからだろう。

それとペニシリンが無くなったとかのセリフが作中にあるんですがサーシャの冒険は19世紀末、ペニシリンが大量生産されるのは50年後くらいなんであのセリフはファンタジーです。

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海外のレビューを読むと「終わりが唐突」という意見がことのほか多く、カッツ・ラーソン・サーシャの三角関係?に決着が着いてないとか、王子が反省してないとか図書館や大使の件がどうなったかわからないとか案外そういう明示されてない部分に躓いてしまう方がおられるようです。
僕は飢餓状態だったクルーたちが正気を取り戻した経緯が不鮮明だったのが少し意味不明に思った。(あの夜はギスギスしてて面白かったです。)

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最後どうなったの?その後彼らはどうなるの?サーシャは今後どうするの?という方。

- そのへんは自由解釈でいいんでは。メンバー揃ってて立派な船もあり探検家の孫もいるわけで、孫を中心に正式に冒険チームが結成され、改めて極地を目指すというのが王道じゃないですかね。最後のシーンで旗が飛ばされたのは「旗を立てに来い」という意味だろうし。

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これは2014年に発表されたパイロットフィルム
https://www.youtube.com/watch?v=JJJMwyE2JWE



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category: 海外アニメ翻訳

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