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おちゃのじかんにきたとら (2019年)  



名作絵本「おちゃのじかんにきたとら」を英国の代表的2Dアニメスタジオ「ループスフィルムズ (Lupus Films)」が23分の短編アニメ化、2019年のクリスマスに合わせ地上波放送されたものが、去る3月20日、日本の教育テレビでも(二ヶ国語版)放送された。

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原作は英国の絵本作家ジュディス・カーが1968年に発表して以来50年にわたり世界中で支持される不朽の名作。日本版は1994年初版だから26年前。世代を越え愛され続ける作品なので、アニメも原作イメージを極力壊さないよう配慮した作りになっている。

アニメーションの背景がほぼ真っ白なのは絵本の挿絵に準拠しているため。
ロビン・ショー監督は「原作はシンプルな作品で、制作者は物語的にも視覚的にも、そこにないもので空間を埋め尽くしたい誘惑に駆られてしまいます。ですが、私はそうはしたくなかったのです」と語る。
https://www.metro.news/tv-to-go-start-your-christmas-telly-by-taking-tea-with-a-starry-voiced-tiger/1840253/


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ミニマルな空間にキャラクターの動きや仕草が映える。最初の見どころは体の小さいソフィーの動きの可愛さ。椅子から降りるだけでも複数動作が必要だったり、コートを着ようとして無意識に体が回る、ウェリーズに足が引っ掛かる時のゴムの質感・・・
正直言うとママの動作は今イチなところが多い。しかし視聴者の目はソフィーに釘付け故に問題なし。



この、レモンがこの形状この固さで複数ぶつかり合ってこう転がる総合的な「レモン感」の強さときたら。
カメラワークわりと多用される印象。必然性より見た目の楽しさやダイナミックさを優先する感じ

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パパ役がシャーロックやDrストレンジのカンバーバッチ。娘ソフィー役が新人子役クララ・ロスである他有名俳優が声の出演を務めるが日本人に馴染みのある名前は少ない。ナレーション担当のデヴィッド・ウォリアムスは大変多才な方だけど、日本じゃ無名か・・・アニメーション分野に本格的に進出したいと公言されているので、今後目にする機会があるかもしれない。
↑の絵だと、夫婦のこの髪色から金髪娘が生まれていいのかと思わなくもない





背景・レイアウトは3DCGを使ってるように見えますね。
「ぬるぬる動く」等の感想を見かけましたが2コマ作画だからでしょう。

トラの全身の筋肉の動きが連動してシマ模様に伝わる作画の見事さを見て欲しい。

このトラのシマ模様やソフィーの市松タイツは手描きだそうです。これが大変すぎて制作時間が掛かり、終盤には新人や学生バイトを含め総勢80人を越える作画人員を確保し人海戦術で19年クリスマスに間に合わせたらしい。制作期間はおよそ2年。30分アニメでこのクオリティその投資、簡単にはリクープできない気がするがどうか。
(ソース1)(ソース2)

日本版DVDは例によって出ないでしょうが、Eテレ放送版も力を入れて有名声優を集めているし、ほどなくウェブ配信各社には来るでしょう。見た目にも製作費が掛かっている、売る側もそれなりに必死なはずです。

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トラが紅茶を飲むシーンには、原作に無い「熱いから気をつけて」というママの台詞が付け足された。英国の放送局チャンネル4側の要望で、子供たちが真似して火傷しないように、という配慮とのこと。

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トラがお茶の時間にやってきてお菓子も食料も全部食べてしまうという、実際ただそれだけのシンプルな物語。伝統的な物語作法に則った筋書きも何もない。それだけに、トラが傍若無人すぎて不快、と思う人もいるかもしれない。ていうか、大人はそう思うはず。

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でもこのトラの振る舞いに大抵の子供は大喜びするし、誰よりもソフィーが大喜び。
子供はこういうヘンな奴や狂気に満ちた存在が大好きです。貴方もそうだったはず。グチャグチャと大きな音を立てて物を食べたり、ノドやお腹がゴロゴロと鳴り響いたりゲップをしたり、そこらじゅうに食べ散らかし、デカくてパワフルで生命力に溢れ気ままで自由奔放、それが子供にとって楽しくて仕方ないのです。
公園に行きたかったのに雨に降られて意気消沈していたソフィーがあまりに目をキラキラ輝かせるので、「そうかこれでいいんだ、正しいんだ」と思えてしまう。不思議な魅力湛える作品です。



中盤のスイングナンバーを元テイクザットのロビー・ウイリアムズが歌う。
Today won't come around again という歌詞は、作中トラの再訪がないことに掛かっていると思う。子供の頃の一度きりの強烈な体験というのが誰しもあるとして、そこから学びや教訓を得るというより、それは通り抜けるものである。「一体何だったんだあれは。今も意味が分からない」と思うような経験はきっと人生を豊かにしてくれる。僕らがシンパシーを感じるのは、この作品のそういう部分ではないかなと。
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category: 海外アニメ翻訳

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