ケレン味とはどんな味ですか?  
2020/02/29 Sat. 00:18 [edit]

メールへの回答
(要約) > よく言われる「ケレン味」とはどんな味のことですか? |
それは「ケレンミ」と読むやで。 味 (あじ) ではないで
> それはわかるんですが、別のサイトさんにこういう文章があって以下略 > ググったら、辞書サイトにはったりとか誤魔化しとか書いてあって > CGのモビルスーツ戦には手描きのような「はったりやごまかし」がない =つまりウソやごまかしの「味」がない、という意味でしょうか? > よく「ケレンミたっぷりな映画」という風に言いますが > 「ウソやごまかしがたっぷりな映画」という意味なんですか? |

https://www.indi-visual11.jp/entry/patlabor-the-movie
確かにちょっと説明が難しい。と困ってたらインテリのH氏が助けてくれた
スマートな言語化センスうらやましい
アンチ・リアリズム(物理的には正しくない)なモーションだけど、リアリズムでは出せないようなカッコ良さがあることなのかなと。
— highland (@highland_sh) February 25, 2020
ということで、今回は 「ケレン味とは一体どういう概念か」 という話
ちなみに冒頭に揚げた内海課長の画像、拾って来た海外の字幕だとこうなってる

■機動警察パトレイバー 第28話 (1990) /脚本:伊藤和典
" Just wait until we show the world "
「世の中に見せてやる、今に知らしめてやる」といったニュアンスになるかな、この場合。日本語版脚本にある「正しいケレン」は姿を消しているが、おそらくは訳しようがなかったものと思われる。

辞書サイトには確かに「はったりやごまかしのこと」、「歌舞伎の奇抜な演出が語源」 的なことが書いてある。

http://enmokudb.kabuki.ne.jp/phraseology/3330
歌舞伎用語サイトでも「宙乗り」「早変わり」などの奇をてらった演出のこと、と書いてありますね。
ただまあ、「ケレン」と「ケレンミ」は実際にラーメンと中華料理程度には違う。内海課長はそれこそ見る人がびっくりするような大事件を起こすぞと言ってるわけだけど、ケレンミとはケレンに接尾語がついた状態表現のようなもので意味するところもより幅広い。
「ケレン」によって作られる、用意される、もたらされる状態を「ケレンミ」と考えればいいのかな・・・。
それこそ歌舞伎で言う「大向こう」、つまり舞台から見て後方の安い料金の席に毎日のように通ってきては「なんとか屋!」とか叫ぶ目の肥えた常連客=大向こうを「唸らせる」つまりアニメで言うなら目の肥えたオタクが「オオッ」と感心するような、派手で見栄えのする仕掛けやアクション作画や一種の過剰な演出、それがケレンミということになるかな。ストーリー進行には関係ないし重要な意味もないけど、お客さんを喜ばせる、あったらお客が大喜びする演出。僕が記事にしてる「三回ドカン」なんかもそうでしょうね。
でも「ケレンミのあるエフェクト」とは言わないですね。エフェクトは派手なのが当たり前だからかな。

意味が曖昧でうまく説明しづらいっていうのは、わりと適当な使い方でいい、別に誰も困らないってことなんだと思うんですよ。厳密にこうだと定義する必要もない。そんな大した語句じゃない。今はもう50過ぎたおっさんくらいしか使わない。まもなく忘れ去られてしまう言葉だと思います。定義があいまいで、使ってもちゃんと相手に通じないんだから、使う場面もないんですよね。
学生の頃、先輩とケレンミについて話していて「デュークフリードのイスが回るだろ、あれだよ」と言われたのを記憶してる。デュークフリードってわかるかな。こういうやつです。

イスが移動する途中で回ることに意味なんてないんだけど、これも良い感じのハッタリですよね。日本中の子供たちやフランス国民が「ただカッコいい!」ってコレに熱狂したんですよ。この、別に必要不可欠じゃないしリソース無駄遣いなんだけど「ただカッコいい」というのがケレンミですよ。
他には、ケレンミでよく言われるのが時代劇で見られる斬られ役の大芝居ですね。

斬られた後、思いっきりためてためて・・・ドサっと倒れる。進行には関係ないんだけど、やっぱりこれがあるせいで見栄えがする、無いとどこか味気ない演出になってしまう(かもしれない)。こういうのは西部劇やバトル物にも普通にありますよね。
画像は1966年東映「丹下左膳 飛燕居合斬り 」(五社英雄 監督) アマプラで見れますが、五社英雄の初期の時代劇作品はホントおすすめ。どの作品もさして上手くはないけどめっちゃ面白い。ケレンミ特盛大サービスです。その後同監督は上手いけど面白くない監督になっていく。


こういう演出もまたケレンミでしょう。
他にも、いわゆる「板野サーカス」や「勇者パース」「中野昭慶フラッシュ」といった様々あるシグネチャースタイルも一種のケレンミです。
よく分からなかった方も、ここまでくればだんだんわかってきたんじゃないですか?




ケレンミたっぷり!っていうと誉め言葉。見栄えや感動を追及したエンタメ重視作品。
ケレンミのない演出!これも誉め言葉。媚びや俗受けを排除したリアリズム重視作品。
要するに、何でもいいんだ。カッコよければ。
category: アニメ
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コメント
ご存知かもしれませんが、PAワークスの堀川社長が若いころに庵野監督に言われたというインタビューがありました。
ttps://www.famitsu.com/news/202002/29193448.html
>庵野監督が昔ガイナックスにいたころに、あのシーンで語られているように「いまの若い子はケレン味のあるアクションの方に行ってしまうけど、もっと基本になる大塚康生さんのような芝居に戻らなきゃいかんのだ」と僕に話してくれたことを覚えていまして、劇中にもそういうセリフが入っていたりします。
>五社英雄の初期の時代劇作品はホントおすすめ。
アクション系は映画『三匹の侍』くらいしか見たことがありませんが、その場にあるオブジェクトを何でも利用する荒っぽい殺陣は魅力的でしたね。
URL | ほっけ #-
2020/03/01 20:00 | edit
リアルより優先される演出的なウソ、なんじゃないかな
URL | #-
2020/03/01 22:16 | edit
Re:
>ほっけさん
このインタビュー面白いもんですね。庵野監督ってガイナ立ちとか元々ケレンミ強めな方なのに、その庵野監督から見てさえ今のアニメのケレンミ描写が過剰であるっていう
プロ声優の演技が濃すぎるから役者を使うっていうジブリの論理に通じるところがある
今の役者は逆にケレンミを嫌う傾向らしいんで
www.oricon.co.jp/special/53806/
>名無しさん
その通りですね~
URL | 管理人 #pBoZlR9Y
2020/03/01 22:36 | edit
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