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3回ドカン研究、その後 (2)の2  

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前回コメ欄で情報をいただいた今泉容子・著「映画の文法」
ここでは「アクションの一致」という用語で説明されています。
Match On Action、これは要するに「アクションつなぎ」のことですね。

稲垣浩「無法松の一生」(1943年)でダブルアクションが使われているらしいということで
時代も時代だし、実際見てもビミョーな感じなんじゃないかな~と思いつつ一応当たってみると



■無法松の一生 (1943年) 監督/稲垣浩

なんと完璧なダブルアクションでした。正直おどろいた。一体なにこの演出的オーパーツ。
戦中・戦前のフィルムは戦災で失われてるものも多いし、
これ以上遡っても、さらなる原点を追求するのは難しそうです。

アクションつなぎというのは、映画を映画たらしめる継続編集、Continuity Editingのキモであります。
アクションつなぎがあるからこそ、アニメは動く紙芝居から一線を画していられる。
ひとつの動作を2カットで割る、2つになった動作が自然につながるからこそ
それを見ている観客は流れていく映像にどこまでも没入することができる。

ではダブルアクションとは一体何なのか、
わざわざ時間を戻して不自然につなげているのに、なぜ僕らはそれを一連の動作と認識するのか。



■弥太郎笠 前篇 (1952年) 監督/マキノ雅弘

弥太郎(鶴田浩二)が岸恵子に別れを告げるシーン。
会話の途中で互いにくるくると振り返る、動作の途中でつなぎが入る部分に注目してください。
意識して見ると、何か微妙なタイミングのズレを感じますよね。

これはアクションつなぎをわざと自然につながず、何コマか戻して繋いでいるわけです。
マキノ雅弘という人はこういうことをちょくちょくやっている。



■次郎長三国志 第三部・次郎長と石松 (1953年) 監督/マキノ雅弘

酔っ払った女(久慈あさみ)の動作と男(小泉博)の振り返り。
ここでもアクションつなぎで微妙な遅延が施されているのがわかると思う。

これは投げ節お仲という女性の本性が観客に伝えられる重要なシーン、
自然に透明に繋いだら何事もなく流れていってしまうところを
あえて違和感の残る遅延を作ることで粗面に仕上げ、印象を強めているわけです。

動作が一致してさえいれば、シルエットが大きく変わってもタイミングが違っても
継続的なひとつのアクションだと人は認識する、
マキノや冒頭の稲垣浩はそれを逆手に取って観客の時間を自在に支配してると。
この発想がやっぱりダブルアクションの成立に繋がっていくんだと思うんですよ。


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■あしたのジョー #22 (1970) 演出/出崎統

アクションつなぎに遅延を用いている例
ダブルアクションのように見えます

こんなgifで見ても「このシーンすごいな」という感じがしませんか。
目を釘付けにされるような。勿論スローモーションの効果もあるわけですけど。
とくに4カット目の奥行きのあるローアングル~5カット目のアップの流れが
なんていうか「ああすごい演出家がいる」という感じがする


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■アタックNo.1 #56 (1970) 演出/岡部英二、竹内啓雄

これも国民的大ヒットアニメ、ACつなぎに遅延はない、しかしダブルアクションにも見えます。

竹内啓雄さんは後に出崎組に合流する方ですがアタック当時は若手でAプロ所属だと思う。
岡部英二さんは東京ムービーの演出家ですね。もともとは実写畑の方らしい。
この時期は「あしたのジョー」絶賛放映中で、出崎演出を相当意識しているように見える。
岡部英二さんはその多大な実績のわりに情報の少ない方ですが、
仕事を見てると柔軟な発想する方だというのはわかる


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■アタックNo.1 #95 (1971) 演出/岡部英二、竹内啓雄

必殺技「竜巻落し」誕生のシークエンス。
最初のセクシーポーズのカットを割って、そこに止め絵2枚挿入するっていう発想がすごい。
ここもタイミングの遅延はないのに、トリプルアクションになっていますね。

遅延がないということは、遅延によって際立つマキノ的な情感や視覚効果を企図しないまま
洗練された演出的な技巧として、なんか知らんけど斬新でカッコいいカメラワークとして
これを取り入れたということで、この融通は伝統ある東映やアバンギャルドな虫プロでは
かえってできないことだったかもしれない。


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■空手バカ一代 #05 (1973) 演出/岡部英二、出崎統

その岡部さんは後にこの作品で出崎さんと直接組む
といっても出崎さんはこの時期エースをねらえを並行してやっていて
空手バカには出崎テイストはほとんど感じられない。
でもこうしてトリプルアクションとかやってるあたり、
岡部さんはどうしても出崎さんと組んでみたかったんだと思う、憶測だけれど。
第3カットは第1カットをリピートしてるようですね。


また長くなった、もうちょい続きます


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category: 3回ドカン

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コメント

さっそく無法松をとりあげてくださってありがとうございます。
自分は本で見ただけなので実際の映像を見てなかったのですが、たしかにちゃんとダブルアクションしてますね。すごい。

完全に思いつきでいっちゃいますけど、サイレント映画だと、こういうのは成立しづらいかもしれませんね。「音」を使ってつなげている面もあるので。
余談ですが、音といえば「スプリット編集」(音のずりあげ・ずりさげ)がいつぐらいからはじまったのか気になるところです。
編集ミスでずれちゃったところからはじまったような気もしますが……。

恥ずかしながら世代的に出崎統監督の作品をほとんど知らないので、こうしてとりあげていただけるとすごく勉強になります。
これからも勉強させていただきます。

URL |  #-
2015/11/23 10:08 | edit

Re: タイトルなし

スプリット編集ですか~。僕はあまり詳しくないですが、
なんとなくだけど、爆撃機のシーンとかを撮ると必然的にLカットになるんで
プロパガンダ映画とか、戦争ドキュメンタリとかにルーツがありそうな気もしますね。
いやわかんないです。すいません

アニメファン的には、印象深いのはやっぱりGetWildかなー
何か面白いネタがあったら是非また教えてください
あと出崎作品なら僕は宝島がオススメです。出崎ルパンは見ないほうがいいです。

URL | 管理人 #pBoZlR9Y
2015/11/23 21:22 | edit

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