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学園黙示録と「女の戦い」  

学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD [12] http://www.geneonuniversal.jp/rondorobe/anime/hotd/

いや、これは実に面白かったです。よくできていた。星をつけるほどではないですが。

自分の豊富な二次元女性との恋愛経験から(涙)
この作品の優れた女性心理描写を解説してみます。


レイの父親は警察官僚
レイは幼少時に父親に溺愛され、思春期以降は厳格に躾けられ育てられた。
また現在までの父は要職につき多忙であり何かと親娘の時間は保てないまま、と
考えるといろいろ辻褄が合う。

幼い娘にとって父親とは絶対的な守護者、これを全世界の王であると仮定。
レイにとって紫藤親子があくなき憎悪の対象なのは
自分の留年がどうとかではなく、父親が涙を流して自分に謝罪したこと、
これによりもたらされた父親の敗北という現実=王の死を
受け入れさせられた衝撃と屈辱があるからでしょう。
これがレイにとっての第一の王の死です。

平時のレイは、かつてすべての愛情を与えられていた幼年時代への渇望を
精神的に満たしてくれる存在=二人目の王を求めていた。

第01話「Spring of the DEAD」

レイにとって幼馴染のタカシは、成長した段階で王にふさわしい力を持っていなかった。
つけいる隙がなく、周囲から尊敬もされず、圧倒的な包容力もない。
つまりタカシはレイにとって王ではなく、レイはタカシでは満たされなかった。
タカシへの期待は、現実のタカシによって裏切られたわけです。
よってタカシは下僕となり、ヒサシが仮の王となります。
しかしこのヒサシはタカシによって殺されてしまう。

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勝手にヒサシを殺したタカシは王殺しの罪人なので罵倒する。
王殺しには正当な理由が必要であり、恋愛とは対象との一体化なので
タカシがヒサシ=自分をずっと憎んでいた、裏切っていたことにする。
このときレイの口を突いて出る言葉は、レイがこれまでずっとタカシに向かって
言いたかったが黙っていたこと。
これは自分がずっとタカシにしてきたこと、思っていたことの裏返しでもあります。
他人を攻撃するときは、自分にとって一番痛い場所を突くわけです。

「私は生き残りたくなかった!私もヒサシに噛まれて奴らになりたかったのに!」
これはタカシにとっては、タカシと生き残るくらいならゾンビになったほうがマシと
言っているに等しい。混乱した勢いで出た言葉とはいえ、これはひどい。
タカシは普通に傷つくと思うが、逆に言えばタカシを傷つけないと、
レイは自分がこれまで積み重ねてきたタカシへの罪と
ヒサシを奪ったタカシの罪をイーブンにできないわけです。

自分を絶対的に守護してくれる王であるはずのヒサシは簡単に死んでしまった。
これが第二の王の敗北と死です。結果としてレイを最後まで守り通せなかったので、
ヒサシもまた真の王ではなく、レイを裏切ったことになる。

それでこのあとレイは、傍らにヒサシの遺体があってさえ
保護を求めてタカシを抱きしめることができるわけですね。
もちろん、現実の恐怖から少しでも逃れるためにですが。

レイ以外の女性の場合、この状況ではタカシの背中に手が回せないはずです。


第06話「In the DEAD of the night」 お風呂回

お風呂で女性陣の肢体を検分したのちパンイチでタカシのところへ。
これには、自分の居場所確保に向けたある種の危機感が伴っていると思われます。
サービス過剰な作品だけど、こういう部分も一応ちゃんと繋がっている。

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レイ「ねぇ聞いてる?」
タカシ「疲れたよな。疲れたよ」
レイ「何それ。そういうところがつまんないのよ」「そんなことだから、私ヒサシと」
タカシ「僕はあいつじゃない、あいつは死んだ。僕が殺した。いい加減現実を認めろ」
タカシ「僕らはまだ生きてる、そして生き残る、絶対に、絶対にだ」

非常時の現在における第三の王の条件は
決して敗北しない、死なない王であることです。
そうでなければレイを最後まで守れない。
このときレイはタカシが次の王となることを確信したはずです。
だからレイはここでタカシと一体化しようとする。


第11話「DEAD storm rising」 高城邸内、タカシの居室にて

レイ「女の子のルール、好きなのは可愛い男と可愛がってくれる男、それだけ」
タカシ「俺はどっちもだめだな」
レイ「そういう時もあったかも。それは認めるわ。でも、今は違う

レイ「タカシは常にすべき事をしてきた、私が気づかなかっただけ
   前からそうだったのかもしれない。多分きっとそう。」
レイ「だから私は貴方と一緒にいる、一緒にいるためならどんなことでもする、
   あなたが他の人を好きになっても」
レイ「そうしなければ生き残れないから」

この一連の台詞はちょっと凄いことを言ってるので、細かく見ていきます。

■タカシはずっと正しかったのに私は気づかなかった
・タカシの良い面が見えていなかったのは自分が愚かだったせい。
→ヒサシのことを好きになったのはタカシの良い面に気づいていなかったから。
→タカシのせいではない→タカシの現状を肯定

■だからタカシと一緒にいる
・他の人を好きになってもOK、それでもタカシのそばから絶対に離れませんよ。

■生き残るため
・自分の目的はこれだけだと思ってくれていい。
→タカシも生き残るために自分を利用してくれていい。セックスもOK。


第09話以降のタカシと毒島冴子との関係進展に気づいた上で、
状況に戸惑っているタカシの隙を突き、ここでも早々に先手を打ったわけですね。

タカシの心情はこの時点でどちらかというと毒島冴子に傾いており
ここでレイが「前はヒサシが好きだったけど今はタカシが好き」などと言ってしまうと
ヒサシもタカシも同時に貶めることになってしまうわけです。
これだとタカシは嫌悪感からレイを拒否してしまう可能性がある。

冴子一人を選びレイを遠ざける、という話になりそうなところを
(責任の所在を問いたがる毒島冴子に対し)レイは一切条件を問わないと宣言することで
力技によって元の関係に戻す、現状で得られる最大限の利益回復に成功している。
ヒサシもタカシも貶めることなく、しかもレイはここまで一切嘘をついていない。

なぜそこまでしおらしくなれるかというと、王の寵愛と庇護を受けるため。
これは結局はタカシと一緒に生き残ることと同義なのです。

レイ「あなたは私の言ったことの意味、よく考えてみて」
→タカシにとって今、レイを遠ざけ冴子一人を選ぶことは生き残るための負担となる。
→レイを拒まず、冴子を選ばないことで「皆で一致協力して生き延びられている現状」が
 維持できる可能性が高まる。


この二人の会話を、部屋の外で冴子が
・聞いていた場合、冴子は負担になりたくないのでこれ以上タカシに近づけない。
・聞いていなかった場合でも、タカシは集団のリーダーとして冴子ひとりを背負う
 ことはできないので、すり寄ってくる冴子をタカシのほうが受け入れられない。

当回前半のリーダー云々という会話が軽い伏線になっている。
ここで現実的にタカシは冴子一人を選ぶことができなくなっているのです。
だから冴子が聞いていようといまいと、レイは構わない。
このあたりの状況作りの上手さは、お見事と言うしかないです。


レイ「先輩からも話してください。そのほうがタカシも嬉しいだろうし」

「先輩からも」というのは、自分はグループの共有利益のために、これからの
ことをタカシと話していただけ、やましいことなど何一つないという宣言。
冴子はそれがわかっているので、せめてもの意趣返しにと
ここでわざわざ年齢の話を振るわけですね。

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嘘のないレイに比べて、嘘で自分を糊塗し続けてきた冴子は対称的な存在である。
このあと最終戦においても二人は互いを意識し合い、
補い合い、利用し合って生き抜いていくのを予感させる。

毒島冴子についても、書いておきたい部分があるんだけど・・・
長くなるので、それはまた別の機会にしましょう。



昨今、僕がやたらキャラクター主義に拘泥するのは
この作品のように1期が未完に終わる作品が増えているからです。

それは業界の事情でやむを得ない部分があるものと推察しますが
一視聴者の視点でアニメ作品を客観的に評価しようとするときに
制作側のキャラクター解釈にちゃんとスジが通ってさえいれば
未完に終わる作品でも幸運にして続編が作られる作品でも
不思議とそう酷いことにはならないように思います。

そういう点で、この学園黙示録の女性心理描写には意外にも目を見張る部分が
多々ありました。基本はおっぱいアクションアニメですが、これなら続編にも
大いに期待できると思います。続編ができるといいんですが。



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category: アニメ

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コメント

王という例えがベストですね。
僕はこういった考察をしたことがなく、見方が随分と変わりました。
本当にありがとうございます。
自分が如何に物事の見方を見誤っていたのかこのブログを読むことによってわかった気がします。
考え方の最初のところで既に行き詰っていたのか、はたまたすぐそこの落とし穴にハマってしまったのか。
今もまだ、その考えからは抜け出せていません。
ですが、きっかけを与えられました。
自分でも正直良くわからないのですが。影響を受けたということは確かです。
ありがとうございました。

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2011/01/29 20:02 | edit

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