大匙屋

健康第一

リハビリ更新 2008春アニメ 二十面相の娘  

二十面相の娘 CX (22) http://www.chico-tv.com/

作画もアクションも高いレベル。並んでる名前も豪華です。
展開も、断片化された情報を散りばめつつハイスピードで疾走する流行とは違い
口数少ない少女の表情に叙情を持たせじっくりと感情移入させてくれる。

劇伴も凝っていて良い出来だったのですが、なんだか音量が低いのか
あまり印象に残らないのがもったいない感じです。音響のせいかな。
OPを歌ってるのもHIPHOPの人らしいのですが、曲自体はフォーク調で、
これはどうなんだろ。好みが分かれるところかもしれない。
少なくとも冒険活劇が始まるって感じのOPではない気がする。

往年のまんが映画を彷彿とさせるレトロチックな世界観と
洗練された現代的なアクションが妙な化学変化を起こし、
わりと類例のない独自のテイストをかもし出してます。
このへんはかつてアニメーターの東大と言われたテレコムの抜群に高い技術力と
稀代の名物プロデューサー南雅彦を擁し業界の最先端を疾駆するボンズの合作
ということで、ある程度想像はつくと思われます。まぁ、失笑も可ですが。

ただ、全体的に抑制された演出なので必然的に掴みは弱い。
派手さがない分、目立つことがないので商業的にはやはり苦戦するでしょうね。


少女を誘拐し盗賊の仲間に加えるという行動には道義的な問題がある筈だが
感性豊かな表情を取り戻し、擬似的な家族関係の中で幸福な成長を遂げる少女を
見ていると、いつしかそんな疑問も奇妙に薄らいでいく。
しかし少女の幸福な時間は長く続かず、結局擬似家族は崩壊し離散。
冷酷な実家に連れ戻されたときには、元の口数の少ない少女に戻っているが
その瞳には以前には考えられなかった、覚悟と矜持の光が宿っています。

この物語は、ようするにダメな親父とその娘の物語だと思いますね。

二十面相は序盤こそ世間を揺るがす大怪盗として描かれますが
物語が進行するにつれ、その理想像もカリスマもどんどんダメになっていく。
和やかだった家族関係も全滅の憂き目にあい、娘や息子とも引き離されるが
結局自分の力でそれらを取り戻すこともできないばかりか
離れていてさえ、自分との過去の関係が彼らを窮地に追い込んでいきます。

あらゆる困難な状況をトリックやギミックで華麗に乗り越えていくのではなく
二十面相が超人的なのは自分の身を守ることくらいで、
基本的にチコや他の登場人物を窮地から救うのは、本人の意志と
いくつかの偶然です。

二十面相はチコのピンチに颯爽と登場するものの、結局あまり活躍しない。
爆弾を満載し落下していく飛行船に、微笑みながらチコを置き去りにするし
地下実験室に爆弾を仕掛け、チコの窮地に登場するまではいいのだけど、
敵有利の状況を逆転させることはできず、事態は悪化の一途をたどることに。
クライマックスでさえ、大量破壊兵器の発射スイッチに手を掛ける教授に対し
「やめろ!」と叫ぶことしかできなかったりする。
要するにこの人は序盤に比べて万能ではなくなっていくわけです。

つまり二十面相は本当は「怪人」などではなく、過ちを繰り返すだけの
ただのダメな大人であると暴露されていくのだけれど、
ただの弱い子供だったチコが、いつしか父を超え、「二十面相の娘」として
確率変動を起こし、事態を奇跡的に切り拓いていくことになります。

二十面相は、自らの犯した過去の過ちに対する贖罪と現実世界への絶望を
その行動の動機とするけれど、チコが二十面相との出会いから学んだのは
強烈な信念と未来への果てしない希望だった。

彼女はどんな目に合わされようと相手を恨んだり憎むといったことがない。
これは見ようによっては偽善的な価値観なのだけれど、
それ以上に、どんな局面にあっても希望を失わなければ
今はダメでもいつかきっと何とかなる、という風にまっすぐ未来を
見つめるゆらぎのない瞳が我々を強く惹きつけてくれる。

世の中なんてそんな甘いもんじゃねえよと冷笑的に受け流すこともできる。
しかし我々のようなオッサンが「純粋だった少年の頃に戻りたい」などと
血迷う時、大人ってのは学校も宿題もなくて金もあって何処にでも行けて
ものすごく自由じゃないか、いったい何が不満なんだという少年からの
反論に、返す言葉など持ち得ないわけです。
だって大人になるってことは、疑うことを覚えるってことだから。

この時点で僕らは薄暗い、二十面相のいる側に立って、
光の当たる場所にいるチコの笑顔に羨望のまなざしを向けることしか出来ない。

「おじさんたちは急ぎすぎたのよ」とチコは言う。
まあ、ゆっくり考えてみるのも悪くはないかと思いますね。
良作でした。





スポンサーサイト

category: アニメ

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://sajiya.blog89.fc2.com/tb.php/109-ca0ddfc6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)