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3回ドカン研究、その後 (2)の3 補足  

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■風雲児たち 第03巻(リイド社刊)/みなもと太郎 (1981年)

'81年にはみなもと太郎先生がすでにパロディに使用されてる

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今回のシリーズ、むだに長くなって申し訳ないです。最後に整理と補足を少しだけ
この3回ドカン研究はそもそも


 ここ数年、3回ドカンを使用した演出が増えているのはなぜか 


というところからスタートして


 テリー伊藤を中心とした90年代のバラエティ番組が影響してるのではないか 


という仮説を立て


 90年代のバラエティに影響を与えたのは80年代の香港映画ではないか 


という感じで一時考えてたんですけども


 どうも違うっぽい。すでに60年代の洋画にある。邦画にも1943年からある。
 アニメには、ダブルアクションもトリプルアクションも70年代初期すでに使用されている。  

 それと
 昔からある技法だけど、正式な統一名称が存在しない。 


今こういう感じです。



■西部警察Ⅱ #38 「決戦・地獄の要塞-名古屋篇-」(1983年)

TVドラマの演出でも'83年にはすでにマルチな撮影が使用されている、ので
その後にくる「ジャッキーチェン香港映画流行の影響」はやはりこの件には関係なさそうです。

今後は'70年代の洋邦画・ドラマなどを中心にまた掘っていくつもりです。
まあ、3回ドカンの記事はあまり受けないですけど自分は好きなので
またいずれ





で、70年代の映画といえば――



ブライアン・デ・パルマ監督の「フューリー」(1978年)
タツノコ爆発かっていう連爆。すでにこういう大げさな多段アクションも70年代にはあった。
こんだけ派手だと、これにインスピレーションを与えた先行作品もあるはずなんだよなぁ

タツノコの連爆はこれより遡って「タイムボカン」(1975年)からですかね。


■タイムボカン #59 (1975年)

連爆はほぼ毎回バンクだったんですが当時は気づかず、子供心にわりと迫力がありました。
(#15などでは爆風で家屋が崩壊する、マクロスの庵野作画より7年早く。)
ちな#59のこの爆発が一番連鎖の数が多い。SEがないと、gifではわからないけど。
これはでも、マルチテイクとは少し違うかも。


以下、多段アクションつながりということで



■美味しんぼ #31 (1989年)

京極さんの「なんちゅうもんを食わせてくれたんや」で有名な回、
回り込み5連。「美味しんぼ」は前回アタックNo.1で少し触れた竹内啓雄さんの監督作品です。
パラ影使ってますね。各話演出は中村孝一郎さん


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■惡の華 #05 (2013年)

これは以前にも書きましたが是非本編で。




■メガネブ! #09 (2013年)

伊達眼鏡サミング4連。アクション4回以上は実はとても珍しい



■ハイキュー!! #24 (2014)

スパイク5連、ここ1年で一番派手だったのがこれかなー
最初のフリップオーバー(回転)、オブジェクトが固定されないんで
どういう目線なのか一瞬わからないけど、そのあとのマルチが全部吹き飛ばす感じ。

通常だとスクリーンディレクションというものがあって、打撃方向をおおむね一定にするんでしょうけど
この作品の日向君の場合、目を閉じてるっていう点が重要ポイントなんで、これはアリですよね。
満仲勧さんはマルチテイクかなり好きな方だと思う。

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3回ドカン研究、その後 (2)の2  

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前回コメ欄で情報をいただいた今泉容子・著「映画の文法」
ここでは「アクションの一致」という用語で説明されています。
Match On Action、これは要するに「アクションつなぎ」のことですね。

稲垣浩「無法松の一生」(1943年)でダブルアクションが使われているらしいということで
時代も時代だし、実際見てもビミョーな感じなんじゃないかな~と思いつつ一応当たってみると



■無法松の一生 (1943年) 監督/稲垣浩

なんと完璧なダブルアクションでした。正直おどろいた。一体なにこの演出的オーパーツ。
戦中・戦前のフィルムは戦災で失われてるものも多いし、
これ以上遡っても、さらなる原点を追求するのは難しそうです。

アクションつなぎというのは、映画を映画たらしめる継続編集、Continuity Editingのキモであります。
アクションつなぎがあるからこそ、アニメは動く紙芝居から一線を画していられる。
ひとつの動作を2カットで割る、2つになった動作が自然につながるからこそ
それを見ている観客は流れていく映像にどこまでも没入することができる。

ではダブルアクションとは一体何なのか、
わざわざ時間を戻して不自然につなげているのに、なぜ僕らはそれを一連の動作と認識するのか。



■弥太郎笠 前篇 (1952年) 監督/マキノ雅弘

弥太郎(鶴田浩二)が岸恵子に別れを告げるシーン。
会話の途中で互いにくるくると振り返る、動作の途中でつなぎが入る部分に注目してください。
意識して見ると、何か微妙なタイミングのズレを感じますよね。

これはアクションつなぎをわざと自然につながず、何コマか戻して繋いでいるわけです。
マキノ雅弘という人はこういうことをちょくちょくやっている。



■次郎長三国志 第三部・次郎長と石松 (1953年) 監督/マキノ雅弘

酔っ払った女(久慈あさみ)の動作と男(小泉博)の振り返り。
ここでもアクションつなぎで微妙な遅延が施されているのがわかると思う。

これは投げ節お仲という女性の本性が観客に伝えられる重要なシーン、
自然に透明に繋いだら何事もなく流れていってしまうところを
あえて違和感の残る遅延を作ることで粗面に仕上げ、印象を強めているわけです。

動作が一致してさえいれば、シルエットが大きく変わってもタイミングが違っても
継続的なひとつのアクションだと人は認識する、
マキノや冒頭の稲垣浩はそれを逆手に取って観客の時間を自在に支配してると。
この発想がやっぱりダブルアクションの成立に繋がっていくんだと思うんですよ。


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■あしたのジョー #22 (1970) 演出/出崎統

アクションつなぎに遅延を用いている例
ダブルアクションのように見えます

こんなgifで見ても「このシーンすごいな」という感じがしませんか。
目を釘付けにされるような。勿論スローモーションの効果もあるわけですけど。
とくに4カット目の奥行きのあるローアングル~5カット目のアップの流れが
なんていうか「ああすごい演出家がいる」という感じがする


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■アタックNo.1 #56 (1970) 演出/岡部英二、竹内啓雄

これも国民的大ヒットアニメ、ACつなぎに遅延はない、しかしダブルアクションにも見えます。

竹内啓雄さんは後に出崎組に合流する方ですがアタック当時は若手でAプロ所属だと思う。
岡部英二さんは東京ムービーの演出家ですね。もともとは実写畑の方らしい。
この時期は「あしたのジョー」絶賛放映中で、出崎演出を相当意識しているように見える。
岡部英二さんはその多大な実績のわりに情報の少ない方ですが、
仕事を見てると柔軟な発想する方だというのはわかる


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■アタックNo.1 #95 (1971) 演出/岡部英二、竹内啓雄

必殺技「竜巻落し」誕生のシークエンス。
最初のセクシーポーズのカットを割って、そこに止め絵2枚挿入するっていう発想がすごい。
ここもタイミングの遅延はないのに、トリプルアクションになっていますね。

遅延がないということは、遅延によって際立つマキノ的な情感や視覚効果を企図しないまま
洗練された演出的な技巧として、なんか知らんけど斬新でカッコいいカメラワークとして
これを取り入れたということで、この融通は伝統ある東映やアバンギャルドな虫プロでは
かえってできないことだったかもしれない。


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■空手バカ一代 #05 (1973) 演出/岡部英二、出崎統

その岡部さんは後にこの作品で出崎さんと直接組む
といっても出崎さんはこの時期エースをねらえを並行してやっていて
空手バカには出崎テイストはほとんど感じられない。
でもこうしてトリプルアクションとかやってるあたり、
岡部さんはどうしても出崎さんと組んでみたかったんだと思う、憶測だけれど。
第3カットは第1カットをリピートしてるようですね。


また長くなった、もうちょい続きます


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3回ドカン研究、その後 (2)  

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■オーバーロード #04 (2015)

ネガティブバーストのシーン。3回ドカンとカメラ三段階プルバックの組み合わせ。
映画用語的には「カット・ズーム・アウト」と言ったりするテクニックです。
その出来事がどれほど広範囲に渡って起きたのか、どこまで遠く音が響いたのかといった
広大なスケール感を表現するときに使用されるこの技法に、
ここではトリプルアクションをうまく組み合わせています。


というわけで今回は久々に3回ドカンの研究記事です。
3回ドカンとは、同じアクションを複数回繰り返す演出、
決定的な一瞬のできごとに映像的な厚みを持たせ、より強い印象を残します。
トリプル(ダブル)アクションとかマルチアングルとか言ったりもする。
海の向こうでは「マルチテイク(multi-take)」という呼び方も。



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■ユージュアル・サスペクツ (1995)


ウィキペディアの出崎統の項目には出崎演出のひとつと書かれています。
また、過去に氷川竜介さんの講話で60年代の東映時代劇が起源と語られていたらしいです。
要するに誰が最初にこの演出を始めたのか、今ひとつハッキリとはしていません。
僕はそれをいろいろと調べたり検証してるわけですが、まだ確信には至っていないです。



■卒業  (1967)

最近見つけたのがこれ。まあ今更な超有名作品なんですが。
映画序盤、ロビンソン夫人の誘惑にベンジャミン(ダスティン・ホフマン)の振り返り
これ、まるっきり出崎演出の3回パンのリズムそのものですよね。
よく見ると3回とも別テイク。

出崎さんは自分の演出において他作品からの影響を否定してたらしいけど・・・
'70年前後にクリエィティブな現場にいた気鋭の演出家が
「卒業」に代表されるアメリカンニューシネマの影響を逃れられたとは考えにくいです。

「あしたのジョー」もそうですが、ニューシネマやヌーベルバーグの映像作品が
日本の劇画やコミックに与えた影響って小さくはないと思うんですよ。
まあ僕が思うだけかもしれないですが。
今でも、たとえば山本直樹さんの作品などには一貫してそういう影響が感じられますよね。



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■エースをねらえ!#20 (1973) 出崎統

これとか、とても完成度の高いダブルアクション。

アニメにおいて複数のカメラで撮影する「マルチカム」的なカット割りは
アクションつなぎという形でなら「佐武と市捕物控」(1968)ですでに見られるんですが
編集点を戻して繰り返すダブルアクションは、現時点では出崎さん登場以前の作品には
発見できてないです。
だからウィキペディア記述も間違っているわけではない。のかもしれない。




■カラビニエ Les Carabiniers (1963年)

ジャン=リュック・ゴダールの初期作品です。
これが今のところ発見できた実写で最古のマルチテイク。

共産主義者の少女を王国軍の兵隊が取り囲むシーン、帽子を外すと金髪がこぼれ落ちる。
まず「何が起きたのか」を見せ、続いて「それがどんな風に起きたのか」を見せる、
マスターショットとミディアムショットの組み合わせ。


ちょっと長くなりそうなんでこの記事つづく


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