大匙屋

健康第一

桜美かつし演出「とらドラ!」の陰影と構図  

第04話 「あのときの顔」 絵コンテ 井出安軌 /演出 桜美かつし

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屋上にいる大河と竜児、
竜児は大河の北村へのアプローチに協力し続けてきたが
北村がかつて大河に告白して振られていた事実を知った竜児は
「なんてもったいないことを」と嘆いてみせる

この時竜児は昇降口付近の影にいて、強いコントラストがかかっているが
照明の当たらない観客席(視聴者)と意味的に同じ位置に竜児がいて
「もったいない」という表現で視聴者の率直な印象を代弁するため。

大河は夕陽に背を向けて歯をくいしばる。
影は過去を象徴しており、このとき大河の顔に影がかかるのは
かつてそういうことがあったけどその時は仕方がなかった、
今更どうしようもないという強い憤りを表現している。

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大河が率直な心情を吐露する際に、周囲の空間には人気がなく
大河と竜児の2人だけであることを視聴者に意識させ、
また「現時点では硬直した手の打ちようがない事」について
語る象徴として金網越しの視点を挟む。

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回想時の北村の顔が影になっているのは、この時の北村の表情が
大河にとって二度と取り戻すことのできない過去であり
抽象化できないたいせつな記憶であることを強調するためかと。


第16話 「踏みだす一歩」 絵コンテ 山本英世/演出 桜美かつし

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北村にとってのカリスマである生徒会長の立ち位置には入射光があり
それに背を向けて表情に影を帯び、一歩を踏み出せないでいる北村。
生徒会長が北村の背を叩くと、心情の変化とともに北村の顔に光が当たる。

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事態収拾後の亜美とみのり。
親友を自負しながら大河の本心に気づけないでいたため
複雑な表情を浮かべるみのりに
「罪悪感はなくなったか」と追い討ちをかける亜美。
亜美がしもてに掃けることで背景が集中線となりみのりの心情に差し込む。
皮肉を言っても何も得られないことを亜美も知っているので一人唇を噛む。

いずれも陰影やコントラストを効果的に利用することで
登場人物たちのやりきれない心情を表現している。


第09話  「海にいこうと君は」 絵コンテ 恵瑛太/演出 桜美かつし
陰影に加えてレイアウト。
真横からのカットを多用することで各シーンの対比が顕著になる。

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竜児とみのり。
二人の位置関係は安定していて、近づくことも遠のくこともなく
シーンを通して一定の間隔を維持し続ける。
この時点でみのりの恋心に関しては明示的に語られておらず
みのりは暗い位置に、竜児は背中に室内の光があたっていて
竜児の心情は何とかしてみのりに近づこうとするが
二人の距離と構図が完全に安定しているため思うように動けない。
みのりの表情に影が落とされたり、鼻から上が見切れたりで
みのりのとって竜児の存在は警戒か歓待かを匂わせない。

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大河にとってこの北村との距離は近過ぎるものであり
極端に左寄りの不安定なレイアウトが
そのまま大河の心情に重なる。
このシーンでは北村のアップは一切使用されず
視聴者を大河の挙動と心情だけに注目させるように作られている。

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腹痛が治り、食事後くつろぐ大河と竜児。
真横からの構図だが、若干右よりの配置であることに注目してみる。

竜児の背中に大河が足をあてて2人とも同じ方向を向いているが
前方に空間を作ることで温かみのあるシーンにわざと不安定感を作っている。
このシーンで完璧に安定した構図を作ってしまうと
「もう大河×竜児のカップルでいいじゃないか」という強い印象を
与えてしまう。
だがこの話はそう簡単ではない、まだまだこの先があるのだという
さらなる展開を、微妙なレイアウトによって予感させている。



見出そうと思えばあらゆるシーンに計算された意味を見出すことが出来る
これまでヒットらしいヒット作に恵まれてこなかった桜美かつしさんにとって
「とらドラ!」はようやく巡り会えた、その実力を如何なく発揮できる
作品となる気がします。

「よみがえる空」などについて語りたい気持ちもあるのですが
膨大になってしまうので、また次の機会に。


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ヘタリア騒動のポイントは韓国起源説  

アニメ「ヘタリア」放送中止 「諸般の事情」で

「韓国起源説」というのは「スシの起源は韓国」とか
「剣道の起源は韓国のコムド」とかいうアレ。

もちろんほとんど全部がトンデモ理論なわけだが
これをネタにしてネットで笑っている分にはいい。

しかし、「こんなのもあった」みたいにネット上で次々新ネタが発掘されたり
まとめサイトのようなものまで出来るようになっていくと、
最初は「韓国人にこんなバカなことを言う奴がいる」という笑い話だったものが、
「韓国人はどいつもこいつもバカなことばかり言う」という
冗談ではすまない話に印象がすりかわる。
実際若いネットユーザーはそうだと思っちゃってるのかもしれない。
これはけっこう怖いことだと思う。

「ことあるごとに起源を主張する、として韓国を侮辱している」
との今回の韓国側主張の報道に対しても
「何が違うんだ。そのとおりじゃないか」という意見が出たりする。


実はさまざまな「韓国起源説」は、大半の韓国人にとっても
真面目に聞く気にもならない、しょうもないネタでしかない。

あまりにもバカバカしいので放置しているわけだが
何かにつけ起源を主張したがる愚かな韓国人も確かに居るには居て、
半ば本気でネット上でさまざまな電波を発信していたり
アジア大会のホームページなど公的な場所でまで主張したりするもので
同胞からも呆れられているのが現実だったりする。

こうしたインチキ起源説を唱えたがるのはあくまでも少数派であり
決してかの国の世論の主流派ではないのだが、
今回のヘタリアへの批判はその「主流派」のほうから出ていると
考えればわかりやすいと思う。

「そんなバカなことを主張するのは一部の人間だけなのだから
韓国人の代表的な意見のように表現されては困る」と言いたいわけだ。


「ヘタリア」関連のパブリシティに「国擬人化コメディー」と書いている時点で
「各キャラは各国のティピカルでステロタイプな人間をモデルにしたもの」と
解釈されるのは致し方ないことだろう。

現実問題として、日本アニメは放送の翌日にはファンサブがネット発信され
単行本になればスキャンレーションが当たり前のように世界に出回ることになる。

そこへ「韓国起源説」を要素として取り入れてしまったら
韓国人側が危機感を募らせるのも当然ではなかろうか。

この韓国人たちの危機感は、厳密にはこれと違うかもしれないが
たとえば我々日本人が、マイク・ホンダやノリミツ・オオニシに感じるような
「ちょっと待て」と言いたくなる感覚に近いものではないかと思う。

日本にも、例えば青森には「十来塚」と言われるキリストの墓があったり
日ユ同祖論なんてものもあったりするが、それらの真偽はともかく、
その主張とするところが世論の主流と一致することなどあり得まい。
だがそれをもって「日本人はみな同じように考えている」と
外国の方々に曲解されるのも、少し困る気がする。


「ヘタリア」はWebコミックを出発点としており
当然ネットユーザーに迎合的というか、親和的な作りになっているが
こと「韓国キャラ」に関しては(作品内での重要度のせいもあるだろうが)
設定や作り込みが他に比べて安易というか、多分にネタ的である気がする。
言い換えれば、やはり脇が甘かったのだと思う。

作家にとっては造形も含めて自作キャラクターに強い愛着があるだろうし
今更設定の変更などは利かないだろう。

それでもビジネスとして一端スタートを切ってしまった以上
これから生じるどのような批判も誤解も、作家が甘んじて受けるしかない。

「韓国人が何を言ってきても突っぱねればいい」という勇ましい意見もあるが
僕にはそれが作品にとって幸福なこととはとても思えない。

絶対無理を承知で言うが、
アニメやコミックはどんな時でもどんな場所でも
それに触れるあらゆる人を幸福にするものであるべきだし、
それを目指すべきだ。


http://notarin.exblog.jp/9411575/

こちらのブログを拝見すると
インチキ起源説をどうにかするべきだという意見が韓国側から出ていたりもして
そういう建設的な話が出てくるようになるのなら
この騒動も、あながち無意味ではなかったなという気分になる。



category: アニメ

取り急ぎ、00後半戦に寄せて  

人は個人ではニュートラルな意識や信念を持っていたとしても
ある集団に自分を帰属させた途端にステレオタイプな思考、行動に偏りがちだ。

集団に帰属した場合の情動は、個人として感じるものより強くもなる。
例えば拉致問題などに対する日本人の情緒的反応がこれにあたる。

また、個人として情緒が不安定であるときには
自分を集団に依拠させることにより
不安感や罪悪感を解消しようとする傾向があるという。
911以降のネオ・リベラリズム、あるいは小泉政権時代の親米保守や
ネット右翼などもこれにあたるかもしれない。

興味深いのは、個人として感じる不安や罪悪感が
より大きな集団への帰属を促し、帰属集団への肯定感や
外部集団への敵対心にすり替わるということだ。

他者集団への「怒り」や「嫌悪」といった感情は
味方集団が共有する情動であり、
個人としての良心の呵責や罪悪感なども合理化されてしまう。

要するに個人で人殺しはできないけど
戦争になればいくらでも無茶をするのが人間なのだ。
今ガザ地区にいるイスラエル兵もそんな状態なのかもしれない。


ルイス・ハレヴィが戦場におけるサジ・クロスロードとの邂逅によって
所属集団であるアロウズへの帰属意識を強めるのは当然といえる。

ソレスタルビーイングへの帰属意識を確固たるものと認識していないサジは
情緒不安定に陥り、刹那に対して感情を爆発させる。
フラストレーションからくる攻撃衝動は、往々にして
その原因そのものではないターゲットに対して向けられる。

ソーマ・ピーリスはセルゲイ・スミルノフに縁故を感じており
おそらくセルゲイとハレルヤの間でララァ・スン的な最期を遂げるだろう。


とにかく正史に連なるガンダム作品ということなので
ソレスタルビーイングは全滅し、GNドライブも失われ、
最終的に連邦成立までを描くのだと思っていたのだが
2期でわからなくなった。
だが、面白くなってきていると思う。


それにしても13話「メメントモリ攻略戦」は
イノベイター戦死の舞台としては最高の条件だったと思うが
それでも物語は彼らの退場を許さなかった。

終盤これ以上の舞台が用意されていると考えることもできるが
残り12話にしては未回収のアングルが多すぎる。
ひょっとしたら第3シーズンもありえる気がする。
まあ、僕の予想は実によく外れるのだけど。


category: アニメ

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「セキレイ」と「ゲキテイ」は何故似ているのか  

以前のエントリーで「セキレイ」主題歌を聴いて
サクラ大戦主題歌「ゲキテイ」を連想する人が
案外多いらしいと書いたんですが、
「似ている」と感じる人が実際僕の周りにもけっこういたので
一体何がこういう現象をもたらすのかに興味がわき、
僕なりにいろいろと調べていました。

当初は音階やアレンジに原因があるのではと考えましたが
セキレイはニロ抜短音階、ゲキテイは旋律短音階で
どちらもマイナーキーであるものの直接の共通点はなく
アレンジに関しても、ブラスとギターを前面に出しているゲキテイと
ストリングス中心のセキレイではあまり似ているとも思えません。

この点についてViola-Netのpunilaさんにお願いしてご意見を賜りました。


>  初めは正直どこがにているのかよく分かりませんでしたが、
>  おそらく、以下の2点だと思います。

>   ・テンポ、パーカッションのビート感
>   ・和音進行

>  和音進行は2つの曲の調が違うので、見出すのに苦労しましたが、
>  要するに、片方の伴奏で、別のメロディが歌えれば、和音進行が
>  似ているといえます。
>  (正確に和音分析していないので、どれだけ似ているかと言われると困りますが。。)


この2つの曲が似ていると多くの人が感じるのは、テンポがほぼ共通なのと
小室哲哉や桑田圭祐などが自分好みのコード進行を多用するように、
和音の進行の仕方が似ているからではないかということです。

BPMに関しては両曲とも140前後でほとんど同じです。
(これはアニソンやJ-POPに普通によくあるBPMなんですけどね)
それとバスドラとスネアのパターンが両曲ほぼ同じです。
セキレイに関してのみ、ABパートはバス4つ打ちなのですが
イントロ、サビ、間奏ともドッ、タッ、ドドタッというほぼ同様の基本形ループです。
これもポップスにおいてとくに珍しいリズムアレンジではないわけですが
同じようなBPMに、同じようなリズムパターン、というのは
この2曲の大きな共通点のひとつといえるかもしれません。


それとコード進行ですが

ゲキテイ Aパート
Em | Em | C D | G B | Em G | D | B7 | Em |
引き裂いた~

セキレイ Aパート
Fm Eb | DbM7 Cm7|Bbm7 Eb7|Ebsus4/Ab Ab|
今命がほら~


これだと似てるのかどうなのかがイマイチわからないので
片方の曲からボイスサンプルのみを抽出し、BPMを調整し、
Em→Fmにピッチコントロールしたうえで他方のオケとmixしてみました。

結論から言うとこの両曲の和音進行、やはりよく似ていました。
もちろんこれはピッチを変えてあるし、メロもアレンジもまったく別物なので
例えばこれはパクリだということではありません。

ただ、少なくない人が「セキレイ」で「ゲキテイ」を連想したり
また「まったく類似性を感じない」という逆の意見の人も数多くいる中で
なぜそういう極端な現象が起こったのか、その原因に
異なる調の奥に隠れたコード進行の共通性があったのかもしれない
・・・と思うわけです。



これは必要な引用だと思ってるけど、やはり著作権侵害になるかな。
もし問題があれば削除します。ビットレートはかなり落としてあります。


オケ:セキレイ/歌:ゲキテイ



オケ:ゲキテイ/歌:セキレイ






作業手順でアドバイスを下さったつんさんとニコマスPの皆さんに感謝。

category: アニメ

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