大匙屋

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「屍者の帝国」のハッピーエンド  

今回はメールへの回答を公開で。(了承済)


(要約)
> 映画の「屍者の帝国」は見ましたか? 大匙屋さんはどういう感想ですか? 
> 私は途中まで面白かったのですが、終盤では何が起きたのかよくわからず、 
> 最後のエピローグも蛇足だと思いました。


そういえばTLにも話題が流れていたのでどうしたのかと思ったら、つい最近地上波で放送されたようですね。2015年秋公開の牧原亮太郎監督作品。「虐殺器官」のプロモーションを兼ねた編成でしょうね。

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http://project-itoh.com/contents/#/empire/top/

僕は原作の持つ文脈にはあまり興味ないですが、これを劇場アニメ化して二時間の尺に収めるのは大変な困難をともなう仕事だと思います。まず困難にチャレンジされているという時点で、このプロジェクトを無条件に称賛しますし応援もします。そのうえで「よくわからねえなあ」と見た人が感じる映画をせっかくお金を掛けて作っている、そこへ「これはこうだよ」とわかった風な解説を加えるのは無粋なことで、この作品を応援したいという自分の気持ちに矛盾します。
それなのに今回これを書く気になったのは、この作品がスーパーハッピーエンドでありながら今ひとつメール主(観客)に伝わっていない、そこに耐えきれないもどかしさを感じるからです。なので以下はあまり真面目に受け止めず「オッサンが何か言っている」程度の気楽さで読み飛ばしていただければと思います。

※以下ネタバレ全開ですので未見の方はご注意



■映画版「屍者の帝国」が途中まで面白い理由

この作品はワトソンが親友フライデーの失われた魂を復活させたいという動機のもとにスタートします。英国ウォルシンガム機関の指揮官「M」の命令に従い「ヴィクターの手記」を探し求めて英国領インド(ボンベイ)~アフガン~日本へと旅しますが、Mの命令で「ヴィクターの手記」を探すこととフライデーの魂を取り戻すことはワトソンにとって同義なので、前半はブレません。
問題は日本を出て船旅後、サンフランシスコの地下水道に入ってからです。


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地下水道内でペンを持つ動作によって「そこにフライデーがいる」ことを確認した後、ハダリーのセーフハウスでワトソンはフライデーを初期化する。
ワトソンは「フライデーの魂を復活させたいという動機」をここで断念するんですよ。これがわかりづらい。


大里化学で「ヴィクターの手記」を解析したフライデーは狂暴化

結果的にフライデー本来の人格も目覚めた

フライデーは狂暴化した自分を制御できず、このままだと親友ワトソンを殺しちゃうので自殺しようとした

自分の望みがフライデーを苦しめていることに気づいたワトソンはフライデーの魂の復活を断念、初期化


流れとしてはこうです。台詞ではこれを説明していないので、よく見ていないと理解できない可能性がある。このあとザワンから通信が入ってMの野望を知り、それを阻止する行動に出るんだけど、それは映画前半の行動目的には含まれていなかった突発的事態なので、話が急にとっ散らかったような印象を受けるわけですね。




■終盤で何が起きたのかよくわからない理由

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まず「M」の目的は本人が言ってる通り「悩み無用、人類みな屍者化」ですよね。ザワンの能力をヴィクターの脳&チャールズバベッジで増幅拡散してそのへんにいる屍者を制御し人を襲わせ手記で魂を上書きするとか、そういう理屈だと思う。

ハダリーキックで「M」が倒れたあと、ザワンは(予定通り)舞台を受け継ぎ、花嫁再生に取り掛かります。
なぜここで急に「花嫁」なのか?
フランケンシュタインの物語を承知してない場合、意味がわからないと思う。フランケンシュタインの怪物(=ザワン)は孤独なので花嫁を求めてるんです。これはもう、元々そういう話なんで、理解するしかない。

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右上にMonster demands a mateと書いてある、もうね彼は本当に孤独がイヤなんですよ。仲間が欲しくて、仲間を得るため、嫁を得るためだけに世界を徘徊してる。彼にそれ以外の存在目的はないんです。

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これがその1935年の映画ですけど、早く嫁を作らせるために睡眠も与えず博士をコキ使う。ブラックです。
ビクター・フランケンシュタイン博士は怪物(ザワン)の生みの親であり世界で唯一の創造神。だからビクターの脳をザワンはずっと探していた。嫁を得るために。人造人間は作ろうと思えばほかでも作れるけど、ほかで作った嫁は本物ではない。本物は唯一神の中からしか生まれてこない。
「M」の謀略によって材料と舞台が整ったので、ザワンは予定通りそれを利用した。


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意思とか物質化した言葉とか、要するに実体化し粒子化した魂。花嫁の魂を作り上げる微粒子レベルの材料。ビクターの脳内にある設計図に沿って、必要なものが採用される。ここはもう生死の境を越えた空間なので、生者は死に、死者は蘇る、フライデーもこの空間でだけ復活できた。



■ハダリー機械にしては性的過ぎない?

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ハダリーは純粋に男の欲望を100%満たすために作られてます。元ネタ参照
キャラクターデザイン時のモデルはスカヨハあたりでしょうか



■最後どうしてああなったの?

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ロンドン塔事件後、手記の解析が完全に終了したっぽいことは結晶化からわかる。ワトソンはビクターの秘術を完全解明したと見るべき。にも関わらずこれをフライデーに施術しない理由は二通り考えられる。

(1)そもそもビクターの手記を使ってもフライデーの魂は復活しない
(2)フライデーを復活させられるけど、やはり復活させるべきではないとワトソンは考えた

いずれにせよ彼は封印を選択した、情報を全部破棄して自殺しても屍者として復活させられるor脳を保存されたらビクターの情報が残るため自分だけ死ぬわけにもいかない、しかし禁忌に触れ多くの犠牲者を出した「落とし前」はつけなくてはならない



■あのエピローグはどういう意味なの?

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まず前提として、ワトソンがフライデーを放り出して自分だけ別人になるとは考えにくい。必ず信頼できる、事情を知っている誰かにフライデーの今後を託したはずです。これは登場人物内だとハダリーしか該当しないので、彼女がその後のフライデーの面倒を見ていると考えるのが自然です。


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「アイリーン・アドラー」と名を変えたという会話があります。シャーロックホームズ小説に出てくる奸婦の名前ですが、山師で食わせ者です。ここでいうアイリーン・アドラー=ハドソン夫人なのだと思うんですよ。ベーカー街221Bの女主人。

上の画像で彼女が着ているドレスはレッグオブマトン(ジゴ袖)、肩部が大きく膨らむ、1890年代に欧州で流行した「エレファントスリーブ」です。エピローグの年代は1883年ごろなので、この袖は若干不自然に流行を先取りしていると言える。10年くらい早いんですよ。
僕はこの袖が「名探偵ホームズ」(1984)のハドソン夫人へのオマージュだと思うんです。

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オマージュっぽい場面ここにも

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「相変わらずよ」「彼なら新しい相棒とロンドン中を駆け回っているわ」この台詞は、ワトソンの近況・日常を随時知り得る立場にハダリーがいることを示している。そしてハダリーはワトソンからフライデーを託されている。このことから考えられるエピローグ時の彼らの立ち位置は

■ハダリーその後
表向きハドソン夫人としてベーカー街221Bにてホームズ、ワトソン、フライデーの面倒を見ている。一方で裏社会に通じ、毒婦アイリーン・アドラーとして事件を起こし探偵たちに仕事と生き甲斐を与え、ワトソンの別人としての人生を陰日向から演出・サポートし続ける。

■フライデーその後
ワトソンの行動を観察し、記録し続ける=アーサー・コナン・ドイル。すべての言葉と行動を書き記す宿命。後年、イアン・フレミングとしてスパイ小説を執筆。その後極秘裏に来日し、とあるSF作家として注目されたのち大作プロットを友人に託し夭逝。あるいは今頃また別の誰かとして、どこかに…


こう考えると、あのエピローグは超ハッピーエンドに見えてきませんか。


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コメント

おぉ、そこまでは考えなかった
フォーリングエンジェルのハッピーエンド版かなとは思ったんですが

URL | 詠み人知らず #-
2017/02/24 02:16 | edit

Re:

これただの妄想です
フォーリングエンジェルって何ですかね?ナンコリの吸血鬼のやつでいいのかな?未読で申し訳ない

URL | 管理人 #pBoZlR9Y
2017/02/24 03:22 | edit

すいません、小説の邦題が「堕ちる天使」、映画の邦題が「エンゼル・ハート」でした。
映画はミッキー・ローク主演で話題になりました。
当時は探偵推理モノ+オカルトっていうのは珍しかったんで、結構衝撃的でした(日本には横溝正史がいましたが)

URL | 詠み人知らず #-
2017/03/08 04:56 | edit

Re: タイトルなし

あー!ありましたね。悪魔と契約するやつ。そういえば共通点がありますね!久々に見たくなった

URL | 管理人 #pBoZlR9Y
2017/03/08 14:38 | edit

小説版も面白いですよ
引き込まれちゃうんでサクサク読めます
あと、悪魔の直筆?のサインなんてのも付いてます

で、主人公のハリー・エンジェルは雑踏に放り込まれるんですがそのあたりがちょっとにてます

URL | 詠み人知らず #-
2017/03/11 02:44 | edit

Re: タイトルなし

ありがとうございます。いずれ機会を見つけて是非読んでみたいです。

URL | 管理人 #pBoZlR9Y
2017/03/11 05:12 | edit

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