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健康第一

2016秋アニメ ステラのまほう  

■ステラのまほう http://magicofstella.com/

高校新入学の本田珠輝(ほんだ・たまき)は同人ゲームを制作する「SNS部」と出会い、絵描き担当の不足を知り、自分にもできることがあると感じて入部を決意。絵を描く技術に不安はあるものの、個性豊かな先輩たちとともに、集団作業のゲーム作りにまい進する。文化系部活もの。

原作は芳文社雑誌連載中の人気漫画、派手さはないが起伏はそれなりにある日常系、志茂文彦さん構成らしくお話は手堅く安定しています。2016年は「New Game!」のヒットがありました、この作品も同系統のライトトーンな金魚鉢かと思いきや、僕にとって意外だった、良かったのはその美術と色彩でした。今回はそっち方面の話をしようと思います。

#01
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冒頭部。床面と立ち上がりのエメラルドグリーンの差し色。これ面白い発想ですよね。
エメラルドグリーンというか、ターコイズブルーというべきか色の名前はややこしいんでアレなんですが
伝統的家屋の趣と、不思議な透明感が同居している奇妙な印象

#02
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ここもそう。つまり赤みやオレンジ系の背景にスカートの色がぽつんとあると浮いちゃうんで、差し色でバランスを取る感じ。キルシュマンの法則というのがありましてね、色対比の効果が大きくなり過ぎてしまう、それを回避するためだと思います。それにしてもこの緑の色使いは大胆というか攻めてますね。本来ないはずの光源だけど違和感ないのが凄い。床や制服の黄色がうまく中間にはさまるからですね。


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そう思って見てみると、美設さんが描いたと思われるキーになるロケーションには要所に差し色として緑青が配置されていて、制服スカートを履いた女子がそこを通ることを想定しているのがわかります。キャラクターが全体的にソフトなトーンなので美術はさらにライトに仕上げる必要がある、そこで立ち絵をなじませ落ち着かせるためにこういう工夫を随所でしているわけです。それに加えて何でもない日常的な場所にすら透明感をともなう明るさがプラスされる。

もちろん川面監督の指示によるものと思われますが、美監さんのセンスと色彩設計さんとのコンビネーションあればこそですね。過剰に高密度でない背景だとこういうことが自在にできるのがいい。これは、京アニやサンライズにはできないことなんですよ。ジブリにもできない、新海さんにもできないことをこの作品はやっている。

美設はクレジットないので美術監督さんが兼ねていると思う、その美術監督は、僕はよく知らなかったけど谷川広倫さんという方(アトリエブーカ)、そういえばブーカの責任者である金子英俊さん(この方は大ベテラン、凄腕)もさりげない差し色で効果の最大化するのを得意としている。でもここまで大胆なのは見た覚えがないな





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次に色指定の話です。色彩設計は重冨英里さんという方、「のうりん」や「田中君~けだるげ」などライトトーン使いで、川面監督が重用している方ですね。もともとシルバーリンクの仕上げさんなのかな。

本田たまきを始めとして各キャラクターにパーソナルカラーが設定されていて、それはOPなどを見ればわかるようになっていますね。本田たまきの場合は黄緑色。

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色分析してカラーバーをつけてみたんでわかりやすいと思う。(よく考えたらつけなくてもわかるなこれ)
絵師初心者としての緑、田舎町在住の緑、畳の色や、抹茶の色などがたまきの緑を象徴してますね。
ピンクのリボンはアクセントカラーで対照色。主人公が緑の子ってけっこう少ないです。


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他のメンバーはこんな感じ。関先輩とユミネは少し被ってるけどユミネはSNS部員ではないので。暖色系は擁護者、寒色系は指導者に割り当てられてるようです。テルは紫色

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この画像だと黒が強いんですけどね。この黒はテルの持つリドル(謎)の部分なんだろう
OPは松根マサトさんのテクニックについても触れたいとこだけど、長くなるのでもういいや。

各メンバーの個人色を12色相環に当てはめるとこう。これだと今イチよくわからないですが

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村上先輩を中心に据えるとこう↓なって、部員同士でわりとバランスのよい配置になってる

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ここにテル先輩を加えると

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こういうのをヘクサード配色といいまして、左上の緑青の部分が空席なんで、たぶんここには将来このカラーを個人色とする新キャラが入るんじゃないかな?

※こういう配色自体が優れているという意味ではないですよ。この作品では調和やバランス重視を選択したということで。
PCCSなんか無視して巧みに外していくのもまた色彩設計さんのテクニックです。誤解なきよう


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このテルとたまきの関係ですが、緑に対して紫は補色とか反対色とか言ったりする、ようするに反対側になる色なわけです。テルはたまきが迷ったり困ったときなどに現れ助言を与えたり、逆に混乱を与えたりする役。テルが現れる時はたまきにとって不利な環境であったり不都合な状況であることが多い。つまり紫色はたまきにとって「アウェイの色」ということになる。

#04
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この紫色がテル空間

#06
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同人ゲーム即売会の会場なんかもアウェイですね。この各話は徹底していて、同人好きのお姉さんがたまきに声を掛けてくるところとかは紫のテル空間なんだけど、関先輩やユミネと話しているカットでは紫の比率が下がった色使いやアングルになっている。わざわざクロスをピンク色にしているのも、アウェイ感を中和するために計算してやっていると思う。


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10話で部室を飛び出してからPCを落とし、テルと会い、村上先輩に謝罪するため尾行する一連もテル空間
ここは美術も気合入ってた、空を覆うように屹立する木立でたまきの感じる息苦しさをさらに強調する
#10
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紫はアウェイの色であり試練の色でもあるわけです。この色のカットを乗り越えるたびに、たまきが少しずつ成長する。視聴者はそういう印象を言葉やストーリー以外の部分で、色のイメージから受け取っている。


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もちろんすべての紫がアウェイを意味しているわけではないです。紫は制服の黄色に対しても対照色なので、生徒が遠くに立っていてもよく映える、だから校舎の廊下は紫色に指定されている。紫がすなわちアウェイなのではなく、アウェイ的状況が紫であるということです。まあ、わかると思いますが


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制服の黄色が映えるための廊下なら青系色でもいいんですが、部室の床がピンクなんで廊下が隣色の紫になるんですね。暖色は先輩たちのカラー、先輩たちがいる大切な場所、ホームの色というわけです。






ところで

#06
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この手前の青いテーブル(クロス)かなりの存在感があって、向こう側の関とたまきがいるピンクのクロスとの対比で奥行感を作ってると思うんだけど、カラーバーで見ると青系色の比率って15%もないんですよね。色って奥が深いですね

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あけましておめでとうございます。
今年もボチボチでやっていきます。






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リチャード・ウィリアムズ 映画タイトルシーケンス集  

おかわり記事です。日本アニメのファンの方にはあまりなじみも無く、触れる機会もめったにないので関心も薄いかもしれませんが、他に好機もないのでこの際まとめておこうかなと。もし何かの役に立てば幸甚です。



What's New Pussycat? (1965年 英国) 邦題「何かいいことないか子猫チャン」
監督 クライヴ・ドナー/主演 ピーター・オトゥール
ウッディアレン脚本デビュー作、ハーレムコメディ、広川太一郎版がお勧め



The Liquidator (1965年 英国) 邦題「殺しのエージェント」
監督 ジャック・カーディフ/主演 ロッド・テイラー
気弱なカフェ店主ボイシーが、誤解からイギリス情報部へスカウトされ、殺し屋として仕事を受けさせられる。弱り果てた彼は、別の殺し屋を雇って仕事を下請けに出し……という、異色スパイ・アクション。
ラロ・シフリン&シャーリー・バッシー



A Funny Thing Happened on the Way to the Forum (1966年 米国) 邦題「ローマで起った奇妙な出来事」
監督 リチャード・レスター/主演 ゼロ・モステル
ブロードウェイ大ヒットミュージカルの映画化。狡猾で最低の奴隷と言われるプセウドラスを中心に古代ローマの奴隷たちが自由を求め大騒動を巻き起こす大作コメディ。



The Spy with a Cold Nose (1966年 英国) 邦題「ブルドッグ作戦」
監督 ダニエル・ペトリ/主演 ライオネル・ジェフリーズ
東西冷戦下での、ブルドッグに装着した小型発信機を巡るスパイコメディ。僕は未見。



Casino Royale (1967年 英国) 邦題「007 カジノロワイヤル」
監督 ジョン・ヒューストン/主演 デヴィッド・ニーヴン
コネリーボンドの向こうを張った豪華キャストのドタバタ劇、僕は好きだけど今見ると退屈かもしんない
なんといってもバカラックの音楽である。「look of love」は若い人にも聞いてほしい



Sebastian (1968年 英国) 日本未公開
監督 デヴィッド・グリーン/主演 ダーク・ボガード
諜報部で暗号解読に従事する数学者セバスチャンと、彼がスタッフとして採用したレベッカのロマンス。
レオ・マッグスの書体Westminster(65年ごろ)取り入れてますね。今だとレトロな印象ですが。この系統の書体が日本人に馴染んだのはBASICマガジンからか、奥村靫正さんの「テクノデリック」からかなあ



Here We Go Round the Mulberry Bush (1968年 英国) 邦題「茂みの中の欲望」
監督 クライヴ・ドナー/主演 バリー・エバンス
ジャイミー・マクレガー17歳、ただひたすら女にモテたいサイケで妄想の日々、ザッツ・スウィンギング・ロンドン



30 Is a Dangerous Age, Cynthia (1968年 英国) 日本未公開
監督 ジョセフ・マクグラス/主演 ダドリー・ムーア
才人ダドリー・ムーアが主演と音楽を手掛けた恋愛コメディ。僕は未見。



The Charge of the Light Brigade (1968年 英国) 邦題「遥かなる戦場」
監督 トニー・リチャードソン/主演 トレヴァー・ハワード
ナイチンゲールで有名なクリミア戦争の激戦「エクラバの戦闘」をシニカルな視点で描く。



Prudence and the Pill (1968年 英国) 邦題「天使のいたずら」
監督 フィルダー・クック/主演 デボラ・カー
長い間セックスレスである妻の浮気を疑う夫、避妊薬をめぐるドタバタを描いたコメディ。

Can Heironymus Merkin Ever Forget Mercy Humppe and Find True Happiness? (1969年 英国) 日本未公開
監督/主演 アンソニー・ニューリー
アンソニー・ニューリー製作・監督・脚本・音楽・主演によるミュージカル。未見。



The Return of the Pink Panther (1975年 英国) 邦題「ピンク・パンサー2」
監督 ブレイク・エドワーズ/主演 ピーター・セラーズ
マンシーニによるメインテーマが有名、 ブレイク・エドワーズとピーター・セラーズは不仲であったが互いに不振を経て11年振りの復活シリーズ第3作。映画は世界的にヒット。



The Pink Panther Strikes Again (1976年 英国) 邦題「ピンク・パンサー3」
監督 ブレイク・エドワーズ/主演 ピーター・セラーズ
前作のヒットを受けて速攻作られた第4作、ピンクパンサー=アニメキャラクター名となり、同名の宝石は登場しない。




おまけ 企業CM


英国のベントルーマンビールCM、81~82年ごろとのこと。これ撮影技術すっげえ。



これは多分78年ごろ、キャラクターはフラゼッタの英雄コナン?最後の金田光みたいなとこのタイミングいい


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リチャード・ウィリアムズ「クリスマスキャロル」(字幕)1971  


■クリスマス・キャロル (A Christmas Carol ) /リチャード・ウィリアムズ 1971

去年 英語版を紹介したんですが、日本語版はないのかと聞かれた経緯もあって自分で作りました。
協力してくれた友人各位に感謝。

アニメーションの世界的レジェンドであるRウィリアムズ監督による1972年アカデミー短編アニメ賞受賞作。19世紀の文豪ディケンズの初版に挿絵を提供した画家ジョン・リーチの絵柄(↓画像)を意識したアートワーク。それに加えてパンやズームを駆使したシーン遷移の鮮やかさが大きな演出的魅力です。

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ちなみに作中に登場するちびっ子ティムの声はリチャード・ウィリアムズの子息で当時4歳のアレックス・ウィリアムズが当てています。彼自身も現在著名なアニメーターであります。

年末年始を通して休みのないブラックな職場にいた20代のころ、少しでも季節感を味わうためにディケンズの原作を読むのが毎年この時期の僕の習慣でありました。ディケンズを勧めてくれたJDを、勇気を出して食事に誘ったら鼻で笑われたのも良い思い出。みなさんも良いクリスマスを。

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