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1982 犬がいた (字幕)  

前回ちらっと紹介した2012年発表の歴代ロシア・アニメTOP100ですが、1位はどんな作品だったのか気になりますか?やはり気になりますよね?

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このランキングは2012年当時ロシアの国産アニメーション「黄金の100年」(成立100周年)を記念して(最初期の人形劇などを含む総合的な歴史らしい)専門家や学者ジャーナリストなど各業界から代表100人が持ち点配分方式で選んだ作品群らしい。商業的成功作品であるとか作画アートスタイルなど美術史的な価値判断ではなく「ロシア人の心に残っている重要なアニメーション作品」といった情緒的な位置づけと思われる。

でまあ、1位は有名なノルシュテインとかだろうと多くの人が思うわけですが、ナザロフの「犬が住んでいました」が1位なんですね。たしかに素晴らしい作品で僕も好きだけれども、これがナンバーワンというのは少し意外な気もした。
せっかくなんで今回これを見ていただこう。



飼い主に家を追い出された<老犬>と過酷な野生に生きる<老いた狼>の奇妙な友情と報恩を描いた短編作品。監督はエドゥアルド・ナザロフ。
原作はウクライナの民話「Sirko」。似たようなお話は世界中にあり、日本人は「泣いた赤鬼」を連想する人が多いみたい。
実際ロシア人と話してみると本当にあきれるくらい誰でもこの作品を知っていて、しかも深く愛している。ロシア最高のアニメ作品だという人も少なくない。(というのは伝聞)

友情とか相互協力といった素朴な価値観を題材にしてる点や、郷愁を誘う民族音楽、アンリ・ルソーのような鮮烈な美術等が強く印象に残るというか、とりわけロシア人には「深く刺さる」んでしょうね。あとウクライナという土地に対するロシア人の並々ならぬこだわり、昨今のクリミア情勢などを見てると元々そういうもんがあるのかもと思うところです。

ナザロフは学生時代にヘルソン州に滞在した経験があり、その時の記憶が描写の手掛かりになっていると語っています。また制作にあたってのフィールドワークでキエフなどで民俗学的な資料を収集、食器や衣類、葦ぶき屋根や農村・森林風景・そして忘れ去られつつあった古い民族音楽などを採り入れていった結果ウクライナのごく一般的な農村風景をかなり正確に描写している点が現地の人々にも高評価されたらしい。

ちなみに小野耕世さんの著書によると監督ナザロフはナレーションのほかに犬の吠える声を担当しており、監督の奥様(動検さん)も女性の声で出演しておられるとのこと。


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「犬と狼が夜の森を歩いたり、誘拐計画を練るシーンを用意してたんだけど、尺の関係で切るしかなかった」とのこと。そういえばセリフを途中で口ごもるような演出が多いのも、尺制限による苦肉の策なのかもしれない。実際にはこのへんの段取りは実に良い方向に作用していて、誘拐のシーンなど一切何の説明もないのに何が起きてるのか見るだけで一発でわかる。

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青白いトップライト美しい・・・。月光が当たってる時だけ彼らは二足歩行する
ラストシーン狼の立ち去った方向をいつまでも見つめ続ける老犬の後ろ姿、胸が締めつけられるような瞬間です。わずか10分の作品でこうも感情を揺さぶってくるのはやはり凄い。ここでかぶさる音楽がまたいいんだよなあ。



主題歌であり挿入歌。訳詞載せようかと思ったけど作品内容とはあまり関係なかったので省く
タイトルは「山の上に」で小鳥を捕まえたとかそんな内容。古いウクライナ民謡とのこと。
ついでに若者たちが夜を練り歩くシーンで歌われる曲がこれ



こっちは「Ой, мамо, люблю Гриця」ママ、私は彼が大好き~みたいな恋人への愛を母親に語る内容っぽい
複数の若いカップルが夜の農村を歌いながら歩いて何をしてるのかは、土地の風俗らしいということしかわからない。村内に結婚を知らせるセレモニーかもしれない。これもナザロフが学生時代に現地で目にした風景のひとつらしい。



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タイリングACつなぎ。マキノ雅弘走りか。



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2005年にトムスク市に建てられたオオカミのブロンズ像


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エドワルド・ナザロフ Eduard Vasilievich Nazarov (1941~2016)

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1954 黄金のかもしか (字幕)  


ZOLOTAYA ANTILOPA/THE GOLDEN ANTELOPE
監督 レフ・アタマーノフ (1954年ソ連/ソユーズムリトフィルム)

翻訳ネタをもうひとつ。
だいぶ前に紹介した「スカーレットフラワー/赤い花」のレフ・アタマーノフ監督による1954年の作品「黄金のかもしか」です。
'55カンヌで特別賞を獲り、2012年にスズダリで発表された歴代ロシア・アニメTOP100で20位に食い込んだ有名作なのですが、毎度のことながら日本ではまったくの無名。状態の良いマスターフィルムが現存しないらしく今後も国内DVD化される見込みは薄そうなのでここで紹介しておきます。


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レフ・アタマーノフ (1905~1981)

舞台はむかしのインド。強欲なラージャ(王さま)が金貨を生み出す伝説のカモシカを発見し、これを捕えようとするが、心優しく正直な孤児の少年がカモシカを助けて匿う。王はカモシカを諦めきれず、少年を逮捕して無理難題を押し付ける・・・
というようなインドの説話が原作。教示めいた部分は共産圏であり童話作品でもあり仕方ないのですが、何よりも見どころはラージャであります。ラージャの声とロト芝居をニコライビッチ・シモーノフという向こうではかなり知られた有名俳優が当てており、このキャラが非常に悪逆かつユーモラスで立ちまくってて抜群に面白い。ひとつラージャの動きや芝居に注目して見ていただきたいです。

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三度笛を吹く場面で、一回ごとに周囲を見渡す芝居。こういう演出がまた可愛いんですよ。


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重そうな馬作画。これを描けるアニメーターはもう少ないだろうな・・・日本にはかろうじてまだいると思うけど。冒頭、狩猟シーンのアクション一連もオススメです。まあ、秋の夜長の暇つぶしにでも。

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ゴブラン2018 Best Friend (字幕)  


Best Friend (2018)

フランスの名門アニメーションスクール「ゴブラン」(Ecole de l'image GOBELINS)  2018年の卒制から
勝手に日本語訳を作りました。通報しないでくださいw

https://business.facebook.com/bestfriend2018film/
https://vimeo.com/276021150 (オリジナル)

スタッフ/
Nicholas Olivieri、Shen Yi、Juliana De Lucca、Varun Nair、David Feliu
https://business.facebook.com/bestfriend2018film/

人生を豊かにするはずのテクノロジーが人を共同体やコミュニケーションから遠ざけ孤独にしていく近未来を、想像力豊かに、視覚的な喜びをもって演出する魅惑の6分弱。

ゴブラン卒制は毎年学生さんの仕事とは思えないハイレベルさだけど、今年はこの作品が一推しかな。サーモスタット6もすごく良かったけど僕はこっちが好み。
製品プロモーションCMのカットからリヴィールフレームでアドトラックにつなぐとことか、終盤雑踏のリグショット、ラストシーンの鏡を使ったスプリットスクリーンとか、思わず唸りましたねぇ

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