大匙屋

健康第一

振り返り+ACつなぎ(2)  

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■絶園のテンペスト #01 (2012)

振り向き・振り返りでアクションつなぎが使えるのは主役級&ヒロインのみなのではないか?という仮説を立ててみよう。
振り向きの動作自体はありとあらゆる作品、とくにOPEDなどで見ることができるけど、これにACつなぎを伴うケースはそれほど多くない。目力、強烈な個性、あるいは特別な心情といったものをすくい取るためにココ一番で使用される振り向きACつなぎは選ばれた登場人物のみに許される演出的特権なのではあるまいか。




OPEDの振り向きダブル/トリプルアクションのルーツは、80年代に一世を風靡した南家こうじさんの演出によるところ大と思う。同ポジでバジェットかつシンプル動作でありながら洗練されて見えるこの演出が後続に与えた影響は計り知れず受け継がれ続けて現代アニメにも見られる今や完全な定番


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■太陽の子エステバン ED (1982) 部分編集
3カット目がスローになるところが良いです

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■うる星やつら ED5 (1983)
なぜ3回なのか、といえば結局ターンターンターンのシンコペーションにはまるからですよね

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■めぞん一刻 OP5 (1987)


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■やさぐれ姐御伝 総括リンチ/予告編 (1973) https://www.youtube.com/watch?v=0Va_85IoJMM

南家さんの元ネタはどこにあるのかなどご本人から語られることもないし推測のしようもない、アニメ系マスコミや評論家はこういう話を聞きに行かないし僕にとって役に立たないといつも思う。

1973年東映の「やさぐれ姐御伝 総括リンチ」は石井輝男監督による女任侠物、この予告編にあるフッテージは本編では使用されていない。石井輝男作品はそれなりの数を見てきたけど個性派カルト監督ではあるがテクニカルな編集で見せるタイプの監督ではないしダブルアクション等使ったのを見た記憶もない。要するにこの予告編は助監の萩原将司さんによる編集と思う。(大手では伝統的に予告編は助監督が作ることが多い)

柔軟な感性を持つ若い助監さんがこういう編集を採用するということは73年当時このトリプルアクションが最新モードで大層イケていたということになるはずだ。この73年より少し前の洋・邦画を洗っていけば高い確率で3回ドカンを使った大ネタが見つかるのかもしれない。ということで、この件の調査は継続。




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■いちばんうしろの大魔王 ED (2010)
3カット目で瞳の中がハートになるとこが良いですよねこれ

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■ミルキイホームズ第二幕 OP (2012)

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■空戦魔導士候補生の教官 OP (2015)

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■プラスティック・メモリーズ #01 (2015)




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category: 3回ドカン

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振り返り+ACつなぎ  


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■響け!ユーフォニアム2 #07 (2016)

職員室を出るあすか母娘を目で追う久美子のACつなぎ
戸口に立つ久美子は横を通り過ぎた二人を右向きに目で追うほうが合理的なんだけど、母娘のただならぬ雰囲気に引っ張られるように左側から振り向いてしまう。最初の動作では去っていく母娘を追い切れず、二段階の振り返り。段階を踏む振り向きはダブルアクションと同じ効果を発揮し、演出に厚みと間をもたらしますね。


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通常、人が振り向く動作では顔より先に瞳が目的方向に動くんですが、ここでは久美子の受けたショックを強調するため顔が先に動き出しています。
瞳の動きがまばたきを挟んで顔の動きを追い越しているところがポイントです。瞳を固定したまま顔を動かしてしまうとすごくアホみたいな表情、蝿や蚊を目で追うようなうつろな表情になる。例えばこんなの↓

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■アラタカンガタリ #11 (2013)





■レガリア The Three Sacred Stars #01 (2016)

遠くで見つめるケイの気配を感じて振り返るレナのT.U.とACつなぎ
すごく綺麗ですねこれ。レナの後方から切り返すローアングルのショットが効いていて、ロケーションの高低差や奥行感が活かされ、カット毎の各レイアウトにメリハリがあります。

こうやって何気ない動作がカメラワークやカットで繋がれると、視聴者は無意識にその繋ぎの意味を探そうとしてしまい、結果的に没入へと誘われる。そして後には何気ないシーンに見合わない強い印象が残される。
レガリアという作品には言いたいことが山ほどあるけど、とりあえずこのカットは美しい。




category: 3回ドカン

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唯登詩樹原作 KIRARA (OVA)  

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■KIRARA (OVA) 2000年

最近見る機会があったので紹介。DVDは中古市場ならまだ容易に手に入るみたい。ということは、それなりの出荷があったということかな。東宝制作、当時の新人声優発掘と連動した企画らしい。
原作は90年代半ばヤングジャンプにて連載された唯登詩樹さんの人気漫画です。「突然現れた妙齢の女幽霊、その正体は未来から来た今カノの8年後の姿だった」という、お色気ありのファンタジーラブコメ。


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キャラクターデザインは高橋しんやさん、レイアウトも全監修やってるぽい
上のgifのシーンはAの冒頭部で木下ゆうき作監パートじゃないかと僕は思うけど確信はなし
左側、乳じゃなくて青い毛布のシワの動きを見てほしい


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絵コンテのクレジットはないので高橋しんやさんが脚本内容からレイアウトを決めてガッツリ関わってる感じと思う。40分足らずの単巻OVA作品にして作画の人数が多いのは完成/発売が二度にわたって遅延するほど制作日程が押した関係でしょう。全体的な作画水準はそこそこの高め、前述の木下作監パートに加え、終盤の除霊シーンが門之園作監パートと思うけど石原満さんほか各作監パートは僕には判断がつかなかった。高橋しんやさんの修正は全編に入ってるように見える。


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きららのウェットな表情(高橋しんやさん)

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比較用 サイファイハリー#15(2000)/鉄コミュニケイション#24(1998)

目元の処理とかアゴや眉の線の流し方、カゲ、首の太さなどこの時期の高橋しんや作画の特徴
達者な絵だけど、KIRARAのほうは唯登詩樹の絵には似てないですね。


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当時の唯登詩樹の特徴だった、ハネた髪の毛の処理、丁寧に押さえてる感じ


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女子大生ブームみたいなのが90年代前半くらいまであって、そういう文化を引きずってる作品なのだと思う。このあとTKが流行ってアムラーとか出てきて女子高生が市場価値を独占していく、そういう時期なので。そういえば妙齢のお姉さんが主役を張る作品って、以降あまり見かけなくなりましたね。


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女の子がふわふわ宙に浮いている絵が面白くて、まあ昔はラムちゃんとか少し前だとアスラクラインとかありますが、こういう作品また作ってほしいなと思うんですけど出てこないですね。レタッチソフトのせいで心霊写真が滅んで、幽霊モノも減ってしまった。
黄昏乙女ってどうだったかな。普通に歩いていたような気がする

物語は原作漫画のエピソードをかいつまんで上手くまとめてありOADはこう作ろうという手本みたいな造り、出版社でなく東宝主導のためかイメージシーン(歌や音楽のコーナー)多め、でも別に気にはならないです。
まあ唯登詩樹作品なので、エッチな魅力を除けばびっくりするような面白さはもともとない。




唯登詩樹作品について語る機会なんてもう二度と無いと思うので、ついでにもう一つ

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■唯登詩樹ベストヒット ヨーロッパの印象 (1990) 18禁

くりいむレモンシリーズのひとつ、これは今でもレンタル可能。大ヒットした同シリーズも斜陽期を迎えテコ入れのため導入された有名漫画家シリーズのひとつ。当時かなり作画レベルは高いと感じたのを覚えてます。今のハイビジョン時代のアニメと比較するのはさすがに無理ですけど


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あーうめえなあと今見てもやっぱり思うんですよね。まあ僕がおっさんだからでしょうけど。
たとえ緻密でなくたって上手いもんは上手いと思うんだよな。無駄が少ないせいかな。

どういうわけか、スタッフクレジットが無いんですよこの作品。WEB上にもまとまった情報は見当たらない。1990年に完全版として発表された前年にセックスシーンをカットした全年齢版が出ているらしく、そっちにはクレジットがあるのかもと思って探してみたことがあるんですが、手に入らなかった。まあクレジットがあったとしてもどうせ多くは匿名でしょうし、意味ないかもしれないけど


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最新刊「最近この世界は私だけのモノになりました…… 3」 集英社 (2016年)
※アフィ苦手なので商品リンクはしない

唯登詩樹さんてもう還暦なんですよ。還暦まで成人漫画家をやってる人生がどういう感じなのか僕なんかには想像もつかないけど、創作意欲が衰えないっていう一点だけで凄いことだと、それは率直に思います。


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1986年、創刊間もない漫画ホットミルク(白夜書房)に投稿したイラストを見て編集者が即連絡、2か月後にはデビューしてたらしい(「ジャンクション」後書きによる)。もっとも、別名義のSFマンガで商業誌デビューは済ませていたらしいので、プロになって30年を越えてるわけですね。
僕が最初に読んだのはこの「ウィンディングパーティー」(1990年)、たしかペンギンクラブに掲載されてたように記憶してる、単行本も買ったけど当時は成人マークなんて無かった(画像は尼にあったもの)
「ぱくっ」からの「もぐもぐ」というコンボがえらい衝撃的だったのをよく覚えている。

絵柄を見ればわかるけど、彼は大友メビウスナウシカ、ルネ・ラルー、JUNE系、そして森山雄治の強い影響を受けている。それがすなおに絵に出ていて、もう本当に好きなものが丸わかりで、こんなまっすぐで正直な性格でクリエイターなんてやっていけるのかと思うほどだった。そして唯登詩樹ほどわかりやすくなくても、同じようなものに影響された作家は当時たくさんいた。だから唯登詩樹が2016年になっても一線で活躍してるなんて当時は想像もしなかった。

画力が高かったので唯登詩樹はほどなく一般誌で描くようになった。掲載誌は週刊ヤングジャンプで、冒頭の「KIRARA」もそのひとつ。画力はほんとうに高かった。だから彼に相応しい原作をつけてメジャーヒットを狙わせようとした編集者がいなかったはずがない。でもそれが実現しなかったということは、彼が自身のオリジナル作品にこだわったということだと思う。
その後唯登詩樹はヤンジャン及びその姉妹誌と、成人漫画誌両方で活躍する人気エロ漫画家になった。

メジャー誌とエロ漫画誌で二足の草鞋というのは、稿料も違うだろうし、言うほど簡単ではないはずだ。彼がそれを選んだのは、それなりにどちらも付き合いやすく、安定して居心地が良かったからではないかと思う。その居心地のよさによって、彼は作家として成長する機会を逸したような気が僕にはしている。こういう言い方は失礼か。その画力とセンスと創作意欲をもってすれば、もっと違う、漫画家としてさらなる才能の開花とそれに相応しい社会的評価が彼にはあって然るべきだったのではないかなと、僕は思っている。

今の彼の作品を見れば、相変わらずエロエロでそこは素晴らしいけど、語り手としては取り留めのない、彼自身が何を求めどこに向かうのかを予感させない、焦点の定まらない物語を量産し続けているように見える。
エロ漫画としてはそれで充分なのだろうし、それで彼は居並ぶ若手を押しのけているわけだから、彼は勝って勝ち続けているのだとも言える。でもなあ、今の唯登詩樹が、本当に彼自身が成りたかった唯登詩樹だとは僕には思えないんだよ。どっかで勝負に出るべきじゃなかったのか。唯登詩樹の代表作はこれだと、誰が読んでも唸って認めざるを得ない、そういう作品をとっくに彼ならば描いていたはずだ。はずだった。

category: アニメ

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